手を動かす刺し子
認知症の母。
脳を活発化させるために、指先を動かす事はとても良い事らしい。
そんな母に、暇つぶしもかねて、刺し子を勧めた。
完成した作品が何作かあるが、何作作っても、慣れない母。
いや、ますます困難に…なってるような?
頭が…
そして、兄からこんな連絡が来た。
母、何とか刺し子をやろうとしているが…苦戦している。
同じことを何度教えても、簡単な事が通じないのは…つらい。
模様の上下が混乱して分からなくなるようで、
他の線が出来るだけ目に入らないシンプルな一直線の方が良いと思う。
ん~他の線が目に入らない一直線って…、ただの一直線?
楽しいか?
例えば…
縦と横の線の色が違えば、出来るだろうか?
どうかな?
それだと出来ると思いたい
本人はやる気だし、よくめげずに聞いてくれるのだが、理解力が無いと言うか…
頭がもう…
あぁぁ、辛いというか切ない…。
なんとも、悲壮だ。
兄の悲壮と、母のやる気の為に、また図形を書いた。
簡単な格子
フリクション(熱で消えるペン)の赤と青で、
1.5cm角の格子柄。
(19.5×30cm)
これならどうだ…?
さっそく母に渡しに行くと…
私「前の(柿の花)は細かくて難しいから、ちょっと簡単なのを作ってみたの。
こっち先にやったら練習になると思うのよ~」と言ってみると…
母「これ? これ先にやるの?」
「うんうん、どう?」
「これ、色があって、もう出来てるじゃない!」
「ん? 赤と青は下書きのペンの色だよ。今までと同じようにその線に沿って糸で刺し子するんだよ。?」
「赤と青で?」
「見やすい様に赤と青にしたけど、後で消えるペンで書いてるから、お母さんの好きな色の糸で刺したら良いんだよ。」
「そうなの? でも、コレで完成で良いんじゃない~」
「これは下書きで、糸で縫ってないから、まだ完成してないの~!」
「そうなの~?」
……
うぅ~! もうどんなレベルの脳ミソなんだよ?
と、こんな感じで渡したが、あんまり気に入ってなさそうな気もするので、しそうにないかも~?
リクエスト
そんな母が私にお願いがあるの~と言ってきた。
母「私が前に刺したヤツあるでしょ~? ここに飾ってたヤツ!
アレ一番気に入ってから…アレだと作れると思うから、アレ作りたいの!アレ持って来て頂戴!」
母のいうアレとは…母の必死のパッチの身振り手振りな説明で↓コレ(菊に麻の葉)の事だと理解した。
今ないけど、どこに置いた?
と母に問うても、まともな答えが返って来るとも思えないので、それについてはスルーした。
コレか~複雑な線が沢山の【麻の葉】柄。
今の母が、出来るのだろうか?
でも、「コレなら出来る」って自信たっぷり言うんだから、仕方ない。
(ちょっと不安…出来なかったら落ち込まないかしら?)
書くの難しそうだけど~!?
兄「母には今よりもうちょっと布を小さめにした方が良いかも…。」
今20×30cmで作ってるが…
それより小さく~(20cm正方形ぐらい?)
書くのが難しかったら、手っ取り早く買うのも手だと思ったが、小さいのと言われると、頑張るしかないか~
もはや、私は母専属の下書き職人だわね。
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そういえば、ここしばらく、母から「あなた」としか呼ばれてない気がする。
私の名前、憶えてるだろうか~?
(怖くて聞けない。)